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俵万智

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俵万智(たわら・まち)

沖縄の石垣島に、息子と移住して3年あまり。旅の人というにはやや長く、島の人というにはまだ短い時間が流れた。その間に書きためたものをまとめ『旅の人、島の人』とした。

住んでみて初めてわかること、慣れてないからこそ驚けること。旅人でも島人でもない宙ぶらりんだから見えるものを、楽しみながら綴ってきた。

全体をあらためて読み返すと、島に来たばかりのころが、すでに懐かしい。「住む」というのは、1日1日を重ねていくことに他ならないのだなあと思う。今ではずいぶん、生き物にもなじんだ。たまに都会のホテルに泊まったりすると、虫が1匹もいないことが、不思議に感じられてしまう。

息子にいたっては「夏休みは、海よりもプールに行きたい」などと言う。海よりもプールのほうが特別、と感じてしまうほど、海が身近にあるのだ。この幸せ者めが!と思う。

旅人の感覚が薄れるのは速く、ほんとうの島人の感覚に近づくには、長い長い年月がかかるだろう。息子の好きなプールでたとえるなら、この本は、ざぶーんと飛びこんだばかりの新鮮な時期。まとめることを勧めてくれた編集者の清水均さんに感謝したい。

章の間にある写真は、折に触れて撮ってきたもの。特に家の前の海と空は、表情の変化が素晴らしく、定点観測のようにシャッターを押してしまった。同時に心のシャッターを押せば、そこからは短歌が生まれる。

旅人の目のあるうちに見ておかん朝ごと変わる海の青あお

夕焼けと青空せめぎあう時をアコークローと呼ぶ島のひと

むらさきに染まる雲あり「紫陽花」はこんな空から生まれた漢字

2014年初夏(『旅の人、島の人』あとがき より)

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